婚姻の取消しと離婚の取消しの違いって?

婚姻の取消しと離婚の取消しの違いって?

こんにちは、サクラサク行政書士事務所です。

行政書士試験のため勉強しているとき、婚姻の取消しは遡及しないが離婚は遡及する、というのがどうも覚えにくかった記憶があります。

取消したんだから最初からなかったってことにならないの?と思いましたが民法で定められてるのでそう覚えるしかなかったんですよね。

婚姻の取消しにしても離婚の取消しにしても非常に稀なケースなのでそうそう起こることではないですが、へぇーそうなんだーくらいの軽い気持ちで読み進めてもらえば幸いです。

婚姻の取消し

婚姻の取消しが認められるのは以下のような事由のある場合に限られます。

婚姻の取消しは2022年の統計では年間15件程度しか認められていません。

不適法な婚姻

婚姻そのものに法的な誤りがあった場合に取り消すことができます。主には以下の3つです。

  • 不適齢婚
  • 重婚
  • 近親婚

法律で婚姻は18歳以上の男女ができると定められています。そのため18歳以下で婚姻した場合は取消しの対象になります。

重婚とは、法律上の配偶者がいる状態で、別の人と婚姻をすることを指します。

例えば配偶者が長期間行方不明になり、失踪宣告をして再婚したのに実際は生存していた場合や、外国で婚姻した事実を認識せずに日本で別の人と婚姻する場合などです。

また法律で近親婚は禁止されており、直系血族・直系姻族・養子と養親の婚姻はできません。親族関係が終了した後も同様です。

これらの婚姻は各当事者や親族、検察官が取り消すことが出来ます。

重婚の場合は、当事者の配偶者や前配偶者も取り消すことが出来ます。

詐欺・強迫による婚姻

詐欺や強迫で婚姻した場合は、当事者保護の観点から取り消しを請求できます。

当事者による取消権は、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後3ヶ月が経過したとき、または追認をしたときは消滅します。

不適法な婚姻で取消す場合も、詐欺や強迫で取消す場合も家庭裁判所に請求する必要があり、その効果は遡及しません。

婚姻取消しが遡及しない(過去に遡らない)理由

婚姻取消しの効果が遡及すると、善意の当事者や第三者に対して以下のような苛酷な結果をもたらす可能性があるため婚姻取消しは遡及しません。

  • 婚姻中に取得した財産の帰属が不明確になる
  • 婚姻を前提に行われた取引の効力が不安定になる
  • 婚姻から生まれた子どもの法的地位が不安定になる

重婚によって生まれた子供でも嫡出子から非嫡出子になることはありません。

婚姻は単なる契約ではなく、社会的にも重要な身分関係です。その効果を遡及的に無効とすることは、社会秩序の安定性を損なう可能性があります。

取消しの原因があることを知らなかった当事者が婚姻で財産を得たときは、現に利益を受けている限度で返還しなくてはいけません。

取消しの原因があることを知っていた場合は利益全額を返還し、知らなかった相手に対して損害賠償責任があります。

離婚の取消し

離婚の取消し

離婚の取り消しは詐欺や強迫といった特定の条件下でのみ可能であり、単に「勢いで離婚した」といった理由では認められません。

離婚の取消しが認められた場合は婚姻の時とは違い、遡及して離婚がなかったことになります。

取消す場合は、詐欺を発見したとき、または脅迫から免れたときから3か月以内に手続きを行う必要があります。それに加えて相手が詐欺や強迫を行っていた事実や、詐欺や強迫がなければ離婚していなかった事実も立証しなくてはならないので現実はとても難しいでしょう。