妊娠中に離婚を決意。子供の戸籍はどうなる?再婚した場合は?
出産前に離婚することになった場合、気をつけることや子供の戸籍がどうなるのか知りたい・・・
妊娠中であっても、離婚することは可能です。
妊娠すると女性ホルモンのバランスが崩れ、少しのことでイライラしたり徐々に変化していく身体にとまどったりと嬉しい変化ばかりではなくなります。
妊娠中は通常の思考ではないことを自分に言い聞かせ、大らかな気持ちで過ごすことも大切です。
それでも配偶者の不貞行為やモラハラ・DVなどで離婚を決意することになった場合、お腹の子供のことを第一に考え慎重に準備を進めていきましょう。
2024年4月1日施行の改正民法で大きくルールが変わりました!
妊娠中に離婚した場合の子供の戸籍
妊娠中に離婚した場合、子供の戸籍は生まれるタイミングによって異なります。
- 離婚後300日以内に生まれた場合
- 離婚後300日を過ぎて生まれた場合
順番に説明していきます。
➀離婚後300日以内に生まれた場合
これまでの民法では離婚後300日以内に生まれた子供は元夫の嫡出子と推定され、元夫の戸籍に入っていました。
しかし元夫のDVやモラハラが原因で離婚に至った場合、元夫の戸籍に子供を入れたくないという母親の心情から出生届を出さないまま放置され、結果として無戸籍の子供が存在するケースがありました。
無戸籍のままだと教育や医療など、さまざまな行政サービスが受けられなかったり身元の証明ができないため子供の成長に大きく影響してしまいます。
この問題を解決するため、民法改正後は離婚後300日以内に生まれた場合であっても母親が再婚した後に生まれた子供は再婚相手の子供と推定されることになりました。
語句の意味
元夫が子供の父親である場合はこれまでと同様、元夫には扶養義務がありますので養育費を請求することが出来ます。
②離婚後300日を過ぎて生まれた場合
子供は「非嫡出子」として母親の戸籍に入ります。
この場合、父親の戸籍には入らず、法的には父親が存在しないことになります。
父親が元夫の場合は認知してもらうことで戸籍に名前が記載されます。
離婚後300日以内に生まれた子供が元夫の子供ではないとき
法律では離婚後300日以内に生まれた子供は、元夫の戸籍に入ることになっています。
民法改正後は離婚後300日以内であっても母親が再婚した後に生まれた子供は再婚相手の子と推定されます。しかし再婚しない場合は元夫の戸籍に入ってしまうため、父と子の親子関係を否定する手続きをとります。
大きく3つの方法があります。
- 嫡出否認調停
- 親子関係不存在調停
- 医師の証明書
順番に説明していきます。
➀:嫡出否認調停
嫡出否認調停とは、嫡出推定が及ぶ子供との親子関係を否定する手続きです。
これまでは父しか嫡出否認調停を申し立てることができませんでしたが、民法改正後は母親や子供も申し立てることが出来るようになりました。
また以前は子の出生を知ったときから1年以内という期限が3年に延ばされました。
申し立てができる人 | 期限 |
---|---|
父 | 子の出生を知った時から3年以内 |
母 | 出生の時から3年以内※ |
子 | 出生の時から3年以内 例外的に21歳まで |
調停で当事者間に「子供は元夫の子ではない」と合意があり、裁判所がその事実を認めた場合は法律上の父子関係が否定され、子供は嫡出子としての地位を失います。
このため子供は元夫の戸籍から外れることになり、相続権などの法律上の権利も失うことになります。
②:親子関係不存在調停
親子関係不存在確認の訴えは、生まれてきた子供とその両親、さらには親子関係に対して利害関係がある第三者が申し立てることができます。
この手続きは、元夫と子供の間に親子関係がないことを確認するために行われます。
例えば元夫が長期間の海外出張をしていた場合や長期で入院していた場合などです。この申し立てに期限はありません。
嫡出否認や親子関係不存在確認のため必要に応じてDNA鑑定も行います。この鑑定は申立人が負担し、費用は数万~十数万です。
③:医師の証明書
離婚後に新たな交際相手との妊娠が発覚し300日以内に出産することもあるでしょう。
その場合は「離婚後の妊娠である」ことを医師に証明してもらうことで、生まれてくる子供が元夫の戸籍に入ることはなくなります。
離婚してから新しい交際相手との交際が始まり妊娠した場合は問題ないですが、元夫との婚姻中に交際していた場合(不倫関係にあったとき)は元夫から慰謝料を請求されることもありますので注意しましょう。
妊娠中の離婚で気をつけること
これまでの民法では「女性は離婚してから100日間は再婚できない」という再婚禁止期間がありました。
これは離婚してすぐに再婚し妊娠した場合、生まれてくる子供が現夫の子なのか元夫の子なのかわからず、子供の権利・利益が守られないという事情によるものでした。
しかし近年DNA鑑定の技術が向上し、血縁関係を明確にすることができるようになったこともあり女性の再婚禁止期間は廃止されることになりました。
離婚から300日以内に生まれた子供が再婚相手の子として推定されることになったとは言え、妊娠中の離婚は身体的にも精神的にも負担が大きくなります。
特に安定した収入がない場合や専業主婦の場合は経済的な準備が必要ですし、子供が生まれたらすぐに復職しようと思っていても出産は何が起こるかわかりません。産休や育休制度の利用や、出産後の収入の安定性を確認しておくことが重要です。
自身とお腹の子の健康に配慮し、必要に応じて離婚の話し合いを中断することも考慮していきましょう。