お金が振り込まれない・・・強制執行はどうすればいい?

離婚公正証書を作成したのはいいけど、いざというときはどうすればいいの?

あらかじめ流れを知っておきたい・・・

養育費などの支払いが滞らないのが一番ですが、相手の転職や環境の変化などで送金がストップする可能性もありますよね。

万が一のことを考えて、いったいどういう手続きで相手に払ってもらえるようにするのか知っておくと安心です。

強制執行とは

厚生労働省によると、令和3年度の調査において養育費をもらっている割合は28.1%、前回の平成28年度調査では24.3%なので多少増えてはいるもののまだまだ低い状況です。

最初は毎月振り込まれていた養育費が徐々に途絶えがちになり、支払うだけの資力があるにもかかわらず支払いが止まってしまうケースも少なくありません。

このようなときに支払いを確保する制度が強制執行です。

強制執行とは、債務者(養育費などを支払う側)に給付義務を強制的に履行させる手続きのこと。

離婚公正証書を作成していれば、強制執行を比較的簡単にすることができます。

令和3年度、養育費の平均額は月50,485円でした。

強制執行するときに必要なこと

強制執行するには以下の3点が必要です。

  • 強制執行認諾文言
  • 送達
  • 執行分付与

一つずつ説明します。

➀強制執行認諾文言

作成した離婚公正証書の中に、以下のような文言が必要です。

  • 第〇条(強制執行認諾)
  • 甲は、第◇条の債務の履行を遅滞したときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した。

公正証書を作成して養育費について決めたとしても、このような文言が入っていないと強制執行することはできません。

②送達

強制執行するためには、債務者(養育費など支払う側)に公正証書の内容を知りうる状態にしておくことが必要です。

送達には2種類あります。

特別送達

債権者(養育費などもらう側)の申し立てにより、離婚公正証書を作成した公証役場で謄本を郵送してもらう方法。

謄本代と送達費用、郵送代がかかる。

交付送達

離婚公正証書作成日当日、公証人から直接債務者へ公正証書を手渡しする方法。

送達費用がかかる。

送達が完了すると、強制執行に必要な「送達証明書」の交付がされます。

交付送達にする場合は、事前に公証人にその旨を伝えておく必要があります。

③執行文付与

公正証書を作成した公証役場で「執行文付与」の申し立てを行います。

執行文の付与とは、強制執行ができるという証明を公証人が与えるという意味です。

以上の3つが揃ったら、債務者の住所を管轄する地方裁判所へ強制執行の申し立てを行います。以後は裁判所の手続きになります。

強制執行できる範囲

強制執行できる範囲

強制執行の対象になるのは、養育費や慰謝料など一定の金銭を支払う契約部分になります。

ですので面会交流や不動産の引き渡しについて強制執行をすることは出来ません。

強制執行できる財産については、不動産や動産、債権などがありますが、相手が会社員の場合は給与を差し押さえるのが一般的です。

養育費の場合は原則として給与の2分の1まで差し押さえることが出来ます。

ただし、すべては債務者に支払うだけの資力があることが大前提。いくら強制執行をしても、そもそも債務者に資力がなければ金銭を回収することはできません。

債務者の資力に不安がある場合は連帯保証人を付けることも対策としてはありますが、離婚公正証書を作成するときに契約がきちんと履行できるかどうか冷静に判断することが大切です。